「動画制作は、プロに外注するもの」少し前まで、これは多くの企業にとって疑いようのない“常識”でした。私たち自身も、かつてはその前提で数多くの映像制作に携わってきました。
ただ、ここ数年でその前提は確実に揺らいでいます。理由はシンプルで、動画が“特別な施策”ではなく、“日常的な業務ツール”になったからです。
私たちCINEMATOは、動画を「作ること」そのものではなく、その動画がどう使われ、どう成果につながるかまでを含めて支援する、マーケティングの実行集団として、多くの企業の現場に入り込んできました。
その中で、ここ数年とくに増えた相談があります。
- 外注だとスピードが追いつかない
- SNSやYouTubeをもっと回したいが、毎回発注するのは現実的ではない
- 動画を活用したい気持ちはあるが、社内にノウハウが残らない
こうした声は、もはや一部の企業だけの話ではありません。動画活用が前提になった今、外注一択では回らなくなってきているのが実情です。
一方で、私たちは内製化の「失敗」も数多く見てきました。ツールを導入したものの、「思ったよりクオリティが低く、ブランドイメージを下げてしまった」「担当者に負荷が集中し、いつの間にか動画更新が止まった」そんなケースも、決して珍しくありません。
だからこそ重要なのは、「内製か、外注か」という二択で考えないことです。
CINEMATOが大切にしているのは、「認識を変え、現実を変える(Perception Change)」というコンセプト。動画制作そのものを目的にするのではなく、「売上」「採用」「認知」「信頼」といったビジネスの成果に直結する形で、どんな体制を組むのが最適かを考えることです。
その答えは、多くの場合、内製と外注を戦略的に使い分ける“ハイブリッド型”に行き着きます。
この記事では、動画マーケティングの現場で数多くの成功と失敗を見てきた立場から、
- なぜ今、動画制作の内製化が進んでいるのか
- 内製化のメリット・デメリットをどう捉えるべきか
- 自社にとって「やるべき内製化」「やるべき外注」をどう見極めるか
を、理論だけでなく実務目線で解説していきます。動画制作の内製化を検討している方が、この記事を読み終えたときに“自社なりの正解”が腹落ちしている、そんな状態になることをゴールにしています。
目次
動画制作の内製化が進む理由とは?市場背景を解説
「最近、内製化の相談が本当に増えましたね」これは、ここ1〜2年で私たちが社内で何度も口にしてきた言葉です。
以前は、動画制作の内製化というと「予算が限られている会社の苦肉の策」というニュアンスで語られることも少なくありませんでした。しかし今は、その位置づけが明確に変わっています。
多くの企業が内製化を検討し始めた背景には、市場構造そのものの変化と、テクノロジーの進化があります。ここでは、現場で感じている3つの大きな変化を軸に整理します。
5G普及と「読む」から「見る」への不可逆なシフト
最も大きな変化は、ユーザーの情報の受け取り方です。5Gの普及とスマートフォンの完全な生活インフラ化により、人は情報を「読む」よりも「見る」ことに慣れてきました。
長文の記事を読む前に、まず動画を見る。分からなければ、動画で確認する。この行動は、もはや一部の若年層だけのものではありません。
その結果、企業における動画の役割も変わりました。
- WebサイトやLPで、サービス理解を助ける動画
- YouTubeやSNSで、自然に認知されるための動画
- 採用や営業で、言葉では伝えきれない雰囲気を伝える動画
こうした動画は、「年に1本作って終わり」では意味を持ちません。むしろ、更新され続けて初めて価値を発揮します。この「多頻度・多用途」な動画活用が進んだことで、すべてを外注で回すやり方が、現実的ではなくなってきたのです。
外注費用の高騰とコスト削減ニーズのリアル
もう一つ、現場で非常に強く感じるのが、外注費用への違和感です。「この動画、なぜこの金額なんですか?」という質問を、企業の担当者が制作会社にストレートに聞く場面も、以前より増えました。
動画制作は、企画・ディレクション・撮影・編集・修正対応と工程が多く、外注すればするほど、どうしてもコストは積み上がります。
一方で、企業側が求めている動画は、SNS用の短い動画、社内マニュアルや説明動画、営業資料の補足動画など、「そこまで作り込まなくていい動画」も増えています。このギャップが、「全部を外注する必要はないのでは?」という気づきにつながり、内製化への関心を高めています。
編集ツールの進化とAIによるハードルの低下
内製化が現実的になった最大の理由は、編集ツールと制作環境の進化です。数年前まで、動画編集といえば高性能なパソコンと専門ソフト、そして一定のスキルが前提でした。
しかし現在は、クラウド上で編集できるツール、テンプレート前提で作れるサービス、AIによる字幕生成やカット編集などが登場し、「動画制作=専門職だけのもの」ではなくなっています。
実際、マーケティング担当や広報担当が、業務の一部として動画を作るケースも珍しくありません。もちろん、プロと同じクオリティを誰でも出せるわけではありません。ただし、ビジネス用途として十分な動画を、スピーディーに作るという目的であれば、内製化のハードルは確実に下がっています。
動画制作を内製化する3つのメリット
動画制作の内製化というと、どうしても「外注費を削減できるかどうか」という一点だけで語られがちです。
もちろんコストは重要ですが、私たちが現場で見てきた中で感じるのは、本当のメリットは、もっと手前ともっと先にあるということです。ここでは、CINEMATOが企業の動画活用を支援する中で、「内製化してよかった」と実感されやすい3つのポイントを紹介します。
1. 外注コストを抑えつつ、チャレンジできる量が増える
内製化の分かりやすいメリットは、やはりコスト面です。ただし、単純に「安くなる」というより、“試せる余地が増える”ことに価値があります。
外注の場合、1本の動画にそれなりの費用がかかるため、「失敗できない」「企画段階で慎重になりすぎる」となり、結果として本数が出せないという状況になりがちです。
一方、内製化すると、少し切り口を変えた動画を試せる、サムネイルや構成を変えて出し直せる、反応を見てすぐ修正できる、といった動きがしやすくなります。これは単なるコスト削減ではなく、動画を「実験できるマーケティング施策」に変えるという意味で、大きなメリットです。
2. 制作スピードが上がり、意思決定が軽くなる
内製化の効果として、意外と見落とされがちなのが、意思決定のスピードです。外注の場合、どうしても「依頼 → 見積 → 企画調整 → 初稿 → 修正」という流れが発生します。これは必要なプロセスですが、SNSやYouTubeなど、スピードが求められる媒体では足かせになることもあります。
内製化すると、思いついたタイミングで撮影でき、社内確認だけでそのまま公開し、数値を見てすぐ次に反映できるという状態になります。
実際、内製化が進んだ企業ほど「動画を作るかどうか」ではなく「どんな切り口で出すか」に議論の軸が移っていきます。この判断の軽さは、継続的な動画運用において非常に大きな武器になります。
3. 動画が“外注物”ではなく“自社の資産”になる
もう一つ、長期的に効いてくるメリットが、動画に関するノウハウが社内に残ることです。外注中心の運用では、「なぜこの構成が良かったのか」「なぜこの動画は伸びなかったのか」といった知見が、制作会社側に蓄積されていきます。
内製化を進めると、「どんな言い回しが視聴者に刺さるか」「どの尺・構成が最後まで見られるか」「社内の誰が話すと反応が良いか」といった感覚が、社内に自然と溜まっていきます。
これは単なる動画スキルではなく、自社の価値をどう伝えるかという“表現の資産”です。動画が「毎回外注する成果物」から、「自社で育てていくマーケティング資産」に変わる。これが、内製化の本質的なメリットだと私たちは考えています。
動画制作を内製化する3つのデメリット・リスク
動画制作の内製化は、正しく設計すれば強力な武器になります。ただし、ここを軽視すると、「やらなければよかった」という結果にもなり得ます。
私たちが現場で関わる中でも、「内製化そのものが悪かった」ではなく、“考えずに始めてしまったこと”が失敗の原因になっているケースがほとんどです。ここでは、内製化を検討する際に必ず理解しておくべき3つのリスクをお伝えします。
1. クオリティ低下によるブランド毀損のリスク
編集ツールやAIが進化したとはいえ、プロと非プロの差がなくなったわけではありません。特に、以下のような点は、内製動画で差が出やすいポイントです。
- 動きが単調で、どこか安っぽく見える
- テロップや色使いがブランドトーンとズレている
- 音声が聞き取りづらく、ストレスを感じさせる
社内で作っていると、どうしても「まあ、これくらいでいいか」という判断になりがちですが、視聴者は意外とシビアです。企業の顔となる動画や、初見ユーザーが触れる動画でクオリティを落としてしまうと、ブランドイメージそのものを下げてしまうリスクがあります。この点を理解せずに、すべてを内製化しようとするのは危険です。
2. 担当者に負荷が集中し、運用が止まる
内製化がうまくいかなくなる典型的な理由が、人の問題です。多くの企業では、動画制作専任のポジションを最初から用意できません。結果として、マーケティング担当が兼務、広報担当が片手間で対応、一部の得意な人に任せきりという体制になりがちです。
最初は回っていても、業務が立て込んだり、人事異動や退職があったり、他施策が優先されるといったタイミングで、動画制作は真っ先に止まります。内製化を成功させるには、「この人がいなければ回らない」状態を作らないことが重要です。
3. 社内視点に寄りすぎて、マーケティング視点を失う
もう一つ、非常に多い落とし穴が、社内目線に寄りすぎてしまうことです。
内製動画では、「自社の言いたいことを詰め込みすぎる」「業界用語や社内用語が多くなる」「誰に向けた動画なのか分からなくなる」といった現象が起こりやすくなります。これは、制作スキルの問題というより、第三者視点を失うことが原因です。
プロの制作会社や外部パートナーが担っているのは、実は「編集」や「撮影」だけではなく、視聴者視点での翻訳・整理の役割でもあります。内製化する場合こそ、「この動画は誰の、どんな課題を解決するのか」を常に問い続ける仕組みが必要です。
【判断基準】自社は内製化すべき?外注すべき?チェックリスト
「結局、うちは内製化すべきですか?それとも外注ですか?」
これは、初回の打ち合わせでほぼ必ず出る質問です。ただ、私たちはこの質問に対して、即答することはありません。なぜなら、動画制作は“正解を選ぶ話”ではなく、“自社に合う形を設計する話”だからです。ここでは、CINEMATOが現場で実際に使っている判断軸を整理します。
完全内製化に向いているケース(SNS、社内マニュアル等)
以下のような条件が重なる場合、内製化は非常に相性が良い選択です。
- 動画の更新頻度が高い(週1本以上など)
- SNSやYouTubeなど、スピードが成果に直結する媒体が中心
- 完璧な映像美よりも「分かりやすさ」「リアルさ」を重視している
- 修正や差し替えが頻繁に発生する
- 動画を通じて社内にノウハウを溜めたい
具体的には、SNS・YouTube運用の初期〜拡張フェーズ、社内マニュアルや研修動画、営業資料の補足動画、ウェビナーの切り抜き動画といった領域です。
これらは、「クオリティより回転数」が重要になるため、外注よりも内製のほうが成果につながりやすいケースが多くなります。
外注した方が良いケース(ブランディング映像、TVCM等)
一方で、私たちが「ここは内製しない方がいい」と止めるケースもあります。
- 企業やサービスの第一印象を決める動画
- ブランドイメージ・信頼性に直結する映像
- 大きな予算や社内外の期待を背負うプロジェクト
- 高度な演出や構成力が求められる動画
例えば、コーポレートブランディングムービー、採用サイトのメイン動画、サービスの世界観を伝えるコンセプト動画、展示会や大型プロモーション用の映像などです。
これらは、失敗したときのダメージが大きい動画です。内製化でチャレンジするよりも、プロのディレクションと客観視点を入れたほうが、結果として安全で、成果も出やすくなります。
おすすめは「ハイブリッド型」|内製と外注を分けるという考え方
実際、最も多くの企業が行き着くのが、内製と外注を使い分ける「ハイブリッド型」です。
CINEMATOがよく提案するのは、次のような考え方です。
- 戦略・コンセプト設計 → プロが担当
- 旗艦となる高品質動画 → 外注
- そこから派生するSNS動画・LPO動画 → 内製
たとえば、ブランドムービーを1本しっかり作り、その素材やトーンを使って社内で短尺動画を量産する。こうすることで、クオリティとスピード、コストのバランスを同時に成立させることができます。
内製化か外注かを「どちらか」で考えるのではなく、動画ごとに役割を分けて考える。これが、失敗しにくい判断軸です。
失敗しない!動画制作の内製化を進める5つの手順
動画制作の内製化で失敗する企業の多くは、「ツール選定」や「機材購入」から入ってしまいます。私たちが現場で何度も見てきた結論はシンプルです。内製化は“制作の話”ではなく、“設計の話”から始めないと失敗する。
ここでは、CINEMATOが実際の支援現場で踏んでいる5つのステップを紹介します。
ステップ1:目的(KGI・KPI)を言語化する
最初に必ずやるのが、「動画で何を変えたいのか」を言葉にすることです。「売上を伸ばしたいのか」「採用のミスマッチを減らしたいのか」「営業の説明時間を短縮したいのか」。ここが曖昧なまま進めると、「動画は作ったけど、何が良かったのか分からない」という状態になります。
CINEMATOでは、再生数だけでなく、指名検索が増えたか、商談の質が変わったか、問い合わせ前の理解度が上がったかといったビジネス側の変化をKPIとして置くことを勧めています。
ステップ2:体制を“現実ベース”で決める
次に重要なのが体制設計です。ここで理想を描きすぎると、ほぼ確実に止まります。誰が企画し、誰が撮影・編集し、誰が最終確認をするのか。
ポイントは、「空いている人」ではなく「続けられる人」を軸に考えること。最初は1人でも構いませんが、将来的に属人化しないよう、「この作業は他の人でも引き継げるか?」を常に意識します。
ステップ3:制作環境は“最低限”から整える
内製化でよくある失敗が、最初から完璧を目指すことです。高額なカメラや照明を揃えても、撮影や編集が面倒になって止まってしまっては意味がありません。
実際、内製化初期に本当に重要なのは、以下の3点です。
- 音声がクリアに撮れるマイク
- 安定して撮れる三脚
- 編集が止まらないPCスペック
映像は多少荒くても、音が悪い動画はほぼ確実に見られません。ここは現場で何度も確認してきた事実です。
ステップ4:ルールを“ゆるく”決めておく
内製化が進むにつれて問題になるのが、「人によって動画の雰囲気がバラバラになる」ことです。そのために必要なのが、最低限のルールです。
- フォントと色
- ロゴの扱い
- テロップのサイズ感
- データの保存場所と命名規則
ここで完璧なブランドガイドラインを作る必要はありません。「迷ったらこれに戻れる基準」があれば十分です。
ステップ5:最初は“テスト”として出す
最後に、そして一番重要なのが、最初から本番だと思わないことです。内製化初期の動画は、ほぼ確実に粗が出ます。
それでも、まず出す、数値を見る、次で直す。このサイクルを回せるかどうかが、成否を分けます。70点で出して、80点、90点に近づけていく。内製化とは、そのプロセスを社内に作ることです。
初心者でも安心!動画内製化におすすめの編集ツール・ソフト
「結局、どの編集ツールを使えばいいんですか?」
これは内製化の相談で、必ずと言っていいほど出てくる質問です。ただ、私たちはこの質問に対して、ツール名から答えることはほとんどありません。理由はシンプルで、ツール選びを間違えると、内製化はほぼ確実に止まるからです。
ここでは、CINEMATOが実際の支援現場で見てきた使われ方をもとに、「この用途ならこれ」という考え方で整理します。
【スマホ・アプリ】手軽にSNS動画を作るなら
SNS向け動画や、スピード重視のコンテンツには、スマホアプリから始めるのが現実的です。現場でよく使われている理由は、かなり単純です。
- 撮影から編集まで一気にできる
- 学習コストが低く、触ればなんとなく分かる
- 「今日は1本出す」という判断が軽くなる
CapCutやVLLOのようなアプリは、テロップ挿入、BGM、簡単なアニメーションまで一通り揃っています。CINEMATOの現場感としても、「まず動画を出す習慣を作る」段階では、スマホアプリが一番成功率が高いという印象です。
ただし、注意点もあります。ブランドカラーやフォントなど、細かいトーン&マナーを守りたい場合には、管理が難しくなることもあります。
【クラウド・AI】ビジネス用途で“止まらない運用”をしたいなら
社内マニュアル、営業資料、サービス説明動画など、複数人で継続的に回したい動画には、クラウド型ツールが向いています。
クラウド・AI系ツールの強みは、ブラウザで編集できPCスペックに依存しにくい点、テンプレートが決まっており品質がブレにくい点、そしてAI字幕や自動カットで工数を減らせる点です。
Video BRAINやCanvaなどは、「動画が作れる人」を増やすというより、「動画が止まらない仕組み」を作るツールだと考えると分かりやすいです。属人化を避けたい企業や、担当者が変わる可能性がある組織には、特に相性が良い選択肢です。
【本格ソフト】クオリティと拡張性を重視するなら
将来的に「外注と内製を組み合わせたい」「ブランド表現に一定以上のこだわりがある」「動画を中長期の資産にしたい」という場合は、本格的な編集ソフトも視野に入ります。
Adobe Premiere Proは、業界標準であり、制作会社とのデータ連携もしやすいのが特徴です。CINEMATOの現場でも、「ベースとなる高品質なテンプレートだけ外注し、日々の差し替えや量産は社内で対応」といったハイブリッド運用が多く見られます。
ただし、いきなり全社導入する必要はありません。まずは一部の担当者から始め、「本当に必要か」を見極めるのが現実的です。
動画内製化によくある失敗パターンと対策
動画制作の内製化は、始めること自体はそれほど難しくありません。本当に難しいのは、「続けること」と「成果につなげること」です。
ここでは、CINEMATOが内製化支援の現場で何度も目にしてきた、典型的な失敗パターンと、その背景にある原因、そして対策を整理します。
失敗1:いきなり完成度を求めすぎてしまう
内製化初期に非常に多いのが、「プロと同じレベルを最初から目指してしまう」ケースです。
テロップの動きが気になって何度も作り直す、表現が気になって公開判断ができない、社内レビューが増えすぎて進まない。結果として、動画が完成しない、あるいは公開されないという状態に陥ります。
しかし、現実には、視聴者はそこまで細かい部分を見ていません。それよりも、「内容が分かりやすいか」「自分に関係があるか」「最初の数秒で興味を持てるか」といった点の方が、圧倒的に重要です。
対策はシンプルです。内製動画は「70点で出す」ことを前提にし、出してから数値や反応を見て改善する。この割り切りができないと、内製化はほぼ確実に止まります。
失敗2:担当者に丸投げしてしまう
「動画が得意そうだから」という理由で、特定の担当者にすべてを任せてしまうケースもよくあります。
最初は問題なく回っていても、他業務が忙しくなる、人事異動や退職がある、モチベーションが下がるといったタイミングで、一気に止まります。これはスキルの問題ではなく、仕組みの問題です。
対策としては、制作フローを簡単に共有しておく、テンプレートや素材を共通化する、「この人しか触れない」状態を作らないことが重要です。動画制作を「個人のスキル」に依存させない設計が、内製化を長続きさせるポイントです。
失敗3:社内目線に寄りすぎてしまう
内製化が進むほど起きやすいのが、社内の論理で作られた動画になってしまうことです。
業界用語が多い、自社の強み説明が長すぎる、視聴者の悩みが置き去りになる。こうした動画は、「作った側は満足しているが、成果が出ない」という状態になりがちです。
対策は、動画を作る前に必ず「この動画は誰の、どんな悩みを解決するのか」を一文で言えるようにすること。第三者視点を意識するだけで、構成や言葉選びは大きく変わります。
動画内製化の再現性が高い2つのケース
動画内製化の成功は、「一気に成果が出た」というより、業務の回り方や判断の質が少しずつ変わっていく形で現れることがほとんどです。
ここでは、現実的で再現性のある成功パターンを紹介します。
ケース1:採用シーンで動画内製化を進める
多くの企業では、採用サイト用のメイン動画は外注している一方で、説明会用やSNS用の動画までは用意できていないケースが少なくありません。理由は単純で、「毎回外注するほどの予算も時間もない」という状態だからです。
そこで内製化しやすいのが、以下のような動画です。
- 社員への簡単なインタビュー動画
- 1日の仕事の流れを紹介する動画
- オフィスの雰囲気が分かる短い動画
ここでは、スマホ撮影+簡単な編集から始め、“作り込みすぎないリアルさ”を重視することが重要です。
採用シーンにおける動画制作の内製化で狙いたいのは、エントリー数の急増ではありません。「入社後のギャップを減らす」という変化です。
面接の時点で会社の空気感が伝わるようになったり、採用後の早期離職が減ったりすることを、成果として目指すのがおすすめです。
ケース2:営業資料を動画化し、商談の質を変える
こちらも多くの企業で見られる課題ですが、営業担当ごとに説明内容がバラバラで、初回商談に時間がかかってしまうケースは少なくありません。
そこで内製化したいのが、サービス全体像を説明する短い動画や、よくある質問をまとめた動画、導入フローを解説する動画です。これらを商談前に活用します。
動画自体は、スライド+ナレーションを中心にしたシンプルな構成で問題ありません。
初回商談がスムーズになる、基本説明が減って課題の話に時間を使えるようになるなど、営業担当ごとの説明のブレを減らすことができます。
動画を「売るための武器」というより、会話の前提を揃えるツールとして使うことで、ここでの動画内製化は成功しやすくなります。
まとめ:まずはスモールスタートで動画内製化を始めよう
動画制作の内製化は、「外注費を減らすための手段」でも、「流行っているからやる施策」でもありません。本質は、動画を“使える状態”にし続けるための選択肢です。
私たちが現場で多くの企業を見てきて感じるのは、内製化に成功している企業ほど、最初から大きなことをやっていない、という事実です。
まずはSNS用の短い動画、社内マニュアルや説明用の動画、営業や採用の補助として使う動画。こうした失敗しても影響の小さい領域から始め、作って、出して、直す、というサイクルを回しています。
そして、ある程度運用が回り始めた段階で、「これは内製でいける」「これはプロに任せたほうがいい」という線引きが、自然とできるようになります。
内製化は、目的ではなく設計です。動画の本数を増やすことよりも、社内で動画を“判断できる人”が増えることのほうが、長期的には大きな価値を生みます。
もしこれから動画制作の内製化を検討するなら、いきなり正解を探そうとする必要はありません。
まずは1本。完璧でなくていいので、「自分たちで作って、使ってみる」ところから始めてみてください。その小さな一歩が、動画を単なる制作物から、ビジネスを前に進める実務ツールへと変えていきます。